こんにちは。スキルアップAIgentのキャリアアドバイザー・金沢です。
スキルアップAIgent Media『クラキャリAI』では、データ人材が「本当に活躍できる」企業のリアルをお届けしています。今回は「データの商社」として急成長する株式会社ナウキャストの大野巧作 / Kevin様にご登場いただき、お話を伺いました。
本記事はインタビューの【前編】です。データサイエンティスト(DS)としての知見を武器に、データエンジニア(DE)へと領域を広げたKevin様のユニークなキャリア、そして若手が主役となる組織文化にフォーカスします。
「今の職場で分析スキルを活かしきれない」「最新技術に触れながら成長したい」──そんな想いを持つ方にとって、キャリア形成の大きなヒントがここにあります。
この記事で分かること
- キャリアの可能性:
なぜDSからDEへ? 現場の課題から生まれたキャリアチェンジのリアルと、両方の視点を持つことの強みが分かります。 - 成長できる組織文化:
「データが主役」の組織とは? 新卒1〜2年目がエンタープライズ案件を担うなど他社ではなかなか得られない「大きな裁量権」のリアルが分かります。 - 事業の独自性:
「データの商社」として、ナウキャストがどのようなビジネスを展開しているかが分かります。
GUEST PROFILE
大野巧作 / Kevin(株式会社ナウキャスト)
東京大学大学院理学系研究科を修了後、2020年4月に株式会社ナウキャスト入社。POSデータのパイプライン構築や分析に携わり、2024年からはデータ分析基盤開発チームのリーダーとしてAWSやSnowflakeを活用したクラウド環境の整備や技術検証を主導。2025年10月、株式会社FinatextホールディングスのVP of Data & AI に就任。Kaggle Competition Masterで、複数の機械学習コンペで入賞実績あり。
株式会社ナウキャスト
東京大学経済学研究科渡辺努研究室における「東大日次物価指数(現:日経CPINow)」プロジェクトを前身として2015年に設立された、オルタナティブデータのリーディングカンパニー。AI時代の金融インフラを提供するFinatextグループにおいて、データAI事業を担う。POSデータやクレジットカードの決済データ、求人広告データなどの「オルタナティブデータ」を多数扱い、生成AI活用とデータ基盤構築の両輪で事業者の業務支援に取り組む。また、独自の経済指数を開発し、経済統計のリアルタイム化、企業の経営戦略の見える化を行い、国内外250社以上の金融機関、シンクタンク、政府、政府系金融機関、海外ヘッジファンド等の資産運用、経済調査業務を支援。
聞き手
スキルアップAIgent キャリアアドバイザー 金沢
新卒でIT/Web業界専門の人材紹介企業に入社し、リクルーティングアドバイザーとキャリアアドバイザーの経験を積む。その後、2022年にスキルアップNeXtへ転職。AI/データ/デジタル人材専門の採用支援サービスを立ち上げ、チームリーダーとして活躍中。人材紹介業務に加え、メンバーのトレーニングや採用イベントへの登壇、事業計画策定など幅広い業務を担っている。
ナウキャストは「データの商社」
金沢 まずは自己紹介をお願いいたします。
Kevin ナウキャストで、データエンジニア兼データプラットフォームエンジニアを務めておりますKevinと申します。
データエンジニアとしては、POSデータと呼ばれるスーパーやドラッグストアでの決済データなどの「日々大量に生成される消費者行動データ」のデータパイプライン(*1)を作ったり、そのデータ分析や、一部Webアプリケーション開発に従事しています。
また、データプラットフォームエンジニアとしては、データ基盤チームのリーダーとして、Snowflakeやdbt、Terraformを中心としたモダンデータスタック(*2)を用いて、社内の全データ人材が効率的に分析・開発できる基盤を整備しています。一言で言いますと、「データを中心に何でもやるエンジニア」です。
金沢 先日はSnowflake社のイベントにもご登壇なさっていましたね。
Kevin はい、Snowflake社の年次イベント「Snowflake WORLD TOUR」でナウキャストの生成AI×データエンジニアリング事例を発表しました。具体的には、構造化データと非構造化データを組み合わせ、いかにリアルタイムでインサイトを抽出するか、というプロセスを紹介しました。日本において、こうした事例を直接発表できる機会は限られているため、非常に貴重な経験となりました。
金沢 改めて、ナウキャスト様はどんな会社なのでしょうか?
Kevin 一言でいうと「データの商社」です。ナウキャストはFinatextホールディングスの子会社で、金融や消費行動などのオルタナティブデータを収集・加工・販売するビジネスを展開しています。取り扱うデータはPOS、クレジットカード、求人、人流、テレビ広告など多岐にわたり、ナウキャストでは40種類以上(2026年3月時点)を横断的に活用できるのが大きな強みです。
単なるデータ販売ではなく、Snowflakeを中心とした社内基盤でデータを精緻に加工・組み合わせ、顧客の意思決定に直結する「データプロダクト」を提供しています。売上はデータ提供者とレベニューシェアするモデルで、まさに商社と同じ構造です。

【キーポイント】オルタナティブデータとは?
財務諸表や政府の公的統計など、従来から使われてきた「伝統的(トラディショナル)データ」に対して、新たに活用できるようになった「代替(オルタナティブ)」となるデータ群を指します。
伝統的データは信頼性が高い一方、発表までに時間がかかり速報性がない、四半期ごとの売上高のように集計されたマクロな数値であるため粒度が粗いなどの特徴から、経済の実態を詳細に把握するには使いづらい場合があります。
それに対し、ナウキャスト様が扱うPOSデータ(何が売れたか)、人流データ(どこに人がいるか)などのオルタナティブデータは、速報性(リアルタイム性)と解像度の高さ(粒度の細かさ)が特徴です。
これらを分析に用いることで、伝統的データだけでは捉えきれなかった経済や社会の動きを、より速く、よりミクロな視点で可視化することが可能になります。
「データが主役」の組織で働く魅力
金沢 まさにデータそのものが商材であると。よく「データが主役の組織」とお聞きしますが、どういう意味でしょうか?
Kevin 一般的な企業では、SaaSや自社プロダクトが主役で、データはあくまでプロダクトを伸ばすための「サポート役」であることが多いです。例えば、ユーザー行動を分析してプロダクト開発に活かす、といった役割です。それに対してナウキャストは、データそのものが商品になっているので、ビジネスの中心にデータが存在しています。
組織としても、データを加工・分析するデータエンジニア、データアナリスト、データサイエンティストといった人材が全体の半数以上を占める「データ人材が主役になる組織」となっています。このような構造は国内でも数少ないユニークな点だと思います。
金沢 Kevin様ご自身が感じる、ナウキャスト様の一番の魅力はどこでしょうか?
Kevin 「多様なデータ」に触れられることと、「優秀な仲間」がたくさんいることだと思います。
一般的な会社だと、提供するプロダクトのデータがメインで、扱えるデータの種類も限定的になりがちですが、弊社にはPOS、クレジットカードデータ、求人データ、人流データ、テレビ広告データなど40種類以上(2026年3月時点)のオルタナティブデータに日常的に触れることができます。データ人材として、これほど面白いビッグデータを使える環境自体が非常に魅力的です。
さらに、メンバーもみんな優秀で、データエンジニアリングが得意なメンバーから、分析でインサイトを出すのが得意なメンバーなど専門性の高いメンバーが多くいます。そういったメンバーと日々ディスカッションしながら、「データをいかに価値につなげるか」、切磋琢磨できる環境は非常に魅力に感じますね。
なぜデータサイエンティストからデータエンジニアへ?
金沢 Kevin様のキャリアについて伺いたいのですが、データサイエンティストから始められて、現在データエンジニアでいらっしゃるキャリアは、とても珍しいなと思います。
Kevin はい。当時は生成AIが普及する前で、機械学習が非常に流行っていた時期でした。私も個人でデータサイエンスのコンペ(Kaggle)に参加するなど、データサイエンティストとして勉強していました。ナウキャストにインターン、新卒として入社した時も、データサイエンティストの役割が中心でした。
しかし、現場で痛感したのは、「綺麗に整ったデータはほとんどない」という現実です。Kaggleのように最初から前処理済みのデータを扱える環境は極めて特殊で、ビジネス現場では自分で整えないと分析できません。
そのため、私のデータサイエンススキルを活かすためには、「データを整えるところも自分でできなければ、分析に着手できない」という課題を感じました。そこから、データエンジニアリング、つまりデータの整備やパイプラインを作ることに興味を持ちました。
分析業務と並行してパイプラインを作る業務をする中で自然とデータエンジニアリングに軸足を移すことになりました。
【キーポイント】キャリアの視点
「分析がしたい。でも、データがない」こんな状況に直面することも、キャリアの中では少なくなかったのではないでしょうか。
データサイエンティストが分析スキルを発揮するには、分析可能な状態に整備されたデータが不可欠です。Kevin様は、「自分のスキルを生かすために、データを整えるところも自分でやりたい」と感じたことをきっかけに、データエンジニアとしてのキャリアをスタートさせました。ビジネス現場では、この二つの領域は相互に深く関わっており、両方の視点を持つことが、データ活用の幅を広げる強力な武器となります。
金沢 その転換によって、データエンジニアとして視野が広がったり、ユニークなスキルが身についたりした実感はありましたか?
Kevin エンジニアリングのスキルがしっかり身につきました。データエンジニアは、クラウド上でパイプラインを構築したり、分析環境を整えたりする仕事もあるため、AWSやSnowflakeのようなクラウドサービスを使いこなすスキルが大きく伸びました。
もともとデータ分析も好きでしたから、両方できるようになったことで、「データに対してできることの幅が広がった」と感じています。
金沢 データの活用方法まで見えているからこその利点、みたいなところもあるのでしょうか。
Kevin そうですね。データの活用方法はさまざまです。単にお客様にデータを提供する場合もあれば、Webアプリケーションに組み込むこともあります。そうした多様な使い方がある中で、エンジニアとして技術を理解していると、さまざまなことにチャレンジができる、それは間違いなくあると思います。
若手だって裁量権を渡される。ナウキャストのカルチャー
金沢 大学生時代にインターンをされていた頃は、御社だけでなくさまざまな企業をみられていたと思いますが、その中でナウキャスト様を選ばれた決め手は何だったのでしょうか?
Kevin 当時はまだ学生だったので、そこまで視野は広かったわけではありませんでしたが、「データが好きな人間として非常に面白いビジネスをやっている会社だ」と感じたのが一番大きいです。働いている先輩方の雰囲気やビジネスの面白さから、「ここなら楽しく働けそうだ」と思い、選びました。
金沢 当時を振り返って、印象に残っている具体的なエピソードがあれば伺いたいです。
Kevin 若手にも裁量があるところです。今もその文化は変わっていませんが、当時、20代の先輩方がデータ分析から開発までフルスタックで担当し、お客様へ直接分析内容を説明していました。それを横で見ていて、「自分もここに入れば裁量を持っていろいろなことができそうだ」と感じていましたね。
金沢 「若手なのにこんなことまで任されるの?」と驚いたようなエピソードはありますか?
Kevin 機関投資家のお客様向けのプロジェクトで、POSデータやクレジットカードデータ、当時のニュース記事データなどを分析してインサイトを提供するという大規模なプロジェクトがありました。
そのプロジェクトを、新卒1、2年目のメンバー2人で、分析からお客様への週次定例の資料作成まで全て担当しました。大変ではありましたが、大きな仕事を任せてもらえたことで得られた経験は、今の自分にとって大きな財産になっています。
金沢 新卒1〜2年目のメンバー2人でエンタープライズのお客様の窓口になるなんて、すごいですね。
Kevin そうですね。そういった仕事に早い段階で関われたのは、非常にいい経験だったと思います。
金沢 一般的には、データエンジニアは「縁の下の力持ち」と言われがちですが、ナウキャスト様の社内ではどのような立ち位置なのでしょうか?
Kevin 弊社でももちろんそういった側面のタスクはありますが、基本的にはデータ自体がプロダクトであり、それを作る人がデータエンジニアなので、ビジネスの中心にいると思います。
プロダクトを作っているという意味では最も重要な役割の1つとも言えるでしょう。実際、ナウキャストには94名(2026年4月1日付け)ほどの社員がいますが、そのうち半分ほどがデータエンジニアで、その重要性は人数構成にも表れています。
金沢 今後のキャリアについてはどのように考えていますか?
Kevin 私はどちらかというとテックリード(*3)的な方向を目指しています。データエンジニアリングに加えて、データ基盤を整備し、みんながデータ活用しやすい環境を作る。いわゆるデータプラットフォームエンジニアリングの領域ですね。そういった領域の中心メンバーとして、技術面でリードできる人材になりたいと考えています。
セキュリティなども含め、誰もが安心してデータを分析・活用できる基盤を作る。そういった取り組みを牽引していける存在になりたいと思っています。
【前編】のおさらいと後編へのご案内
【前編】では、ナウキャスト様の「データが主役」というユニークな組織文化と、Kevin様がDSからDEへとキャリアチェンジされた背景、そして若手にも大きな裁量が与えられるカルチャーについて伺いました。
【後編】では、ナウキャスト様が130TBを超える多様なデータをどのように扱っているのか、Snowflakeとdbtを駆使する「モダンなデータ基盤」や、具体的なプロジェクト事例について、さらに詳しく伺っていきます。
データ人材専門キャリアアドバイザーより
Kevin様のように、現場の課題感から新たなキャリアへ踏み出すケースは増えています。 「自分のスキルを活かせる次のステップは?」「DSとDE、どちらが向いている?」とお悩みの方は、ぜひスキルアップAIgentの無料キャリア相談をご利用ください。
スキルアップAIgent 無料キャリア相談
用語解説
- *1 データパイプライン: データをある場所から別の場所に移動させ、途中で処理・変換するための一連の仕組み。
- *2 モダンデータスタック: 現代のデータ分析基盤を構築するために使われる、Snowflakeやdbtのような先進的なツールの組み合わせ。
- *3 テックリード: 技術的な側面から開発チームを導き、設計やコード品質に責任を持つエンジニアの役割。
